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Chapter-9  Op.WhiteAce Two

とりあえず、艦これ大流行中ならこの艦隊戦はイージーすぎですよね……

というわけで、スーパークロノタイム。(一応)


続きよりご覧ください。
 遠隔起爆装置を作動させないためには、遠隔からの何らかの信号(シグナル)を断てばいい。殺人的な緊張感の中、宗介からの緊急通信を受けたシータは航行船格納庫に下りていた。何度か貨物が上げ下げされていたのだろうか、少し閑散とした状態のそこは外気が入り込んでいて夏服のシータには相当凍える寒さを感じさせた。魔力増幅効果のある愛機(グレイプニル)を携行していないため、シータはデバイス無しの術式で通信妨害をかける。体内AMF効果が薄れ、航行船内のAMFも自分の術式で対抗できるようにはなっていたが、模擬戦の時とは異なり大きく影響力を出せない自分の魔法にシータは苛立ちを感じた。もともと魔力保有量はBランク魔導士の基準値を下回っており、カートリッジの並行使用やデバイスによる増幅効果がなければ様をなさないシータの魔法であったが、通信妨害という程度のことはそれでもできた。

「……古に帰する力、ここに集結せよ……妨害の息吹(アイミシャン・アーテム)

 誰がいるわけでもなかったが、言いようのない孤独感と孤独でなければならない(・・・・・・・・・)現状におかしさを覚えながら、シータはできるだけ声を潜めて詠唱した。自分の魔力が小規模な空間ながらも異様な感覚を生じさせているのを覚え、シータは格納庫を後にした。

 妨害の息吹(アイミシャン・アーテム)は自分の意識が途絶えさえしなければ、相当な魔術解析者じゃない限り術式の解除は不可能なように工夫してある。次の問題は、避難民の安全な誘導だった。こういう時、自分の若さは仇になるな、とシータは思う。というのは、パニック状態に陥った集団心理は自分の保護を最優先して、「長老」的存在でないものには従わなくなるからだ。しかもこれから行おうとすることは、管理局の公式の非難命令ではなく、単なる一個人としての要望でしかない。果たしてこの後事態がどう転ぶか、それは天だけが知りうることだとシータは思った。

 とりあえず、まずは連絡を取らなくてはならない。フェイトとの護衛官緊急連絡チャンネルを使おうとした矢先、通路の奥に影が見えた。

 まずい、見張りか――そう思う刹那、シータは眼を動かして隠れる場所を探したが、残念ながら調度いいもの影もない。しまった、気を取られすぎていたか、とシータは思ったが、どうしようもなく通路に佇んでいると、影が姿を現してこちらに気づいた。何か嫌な汗を掻きながらシータはこの場をどうしのぐかを考え始めた。

「おい、貴様、何をしている?」

 屈強な兵士を思わせる男が急いでこちらにやってくる。為す術もなくシータはそこにいたが、なるべく口を動かさないように詠唱を行う。この詠唱速度ならば……

「貴様、何者……っ!?」

 近づいてきた男の顔面に魔法陣を即時展開する。AMFは魔力結合を妨害するものだが、結合させない中で魔力を一点に集中させるとそれはエネルギーへと転化する。シータはそれを光へと変化させ、男を一気に無力化させる。そのまま肘鉄をくらわそうとしたところで、その男の腕が首元を締めてくる。一度つかまれたそれは引き離すこともできず、男は爆発的な閃光にも関わらず首を締め付ける。一瞬で肺が酸素を求めて灼熱し、目が霞む。力の入らない手足で胸板を叩いてもその力はいっこうに衰えることがない。

 このまま死ぬのか――なんとなくそれが脳裏に浮かぶが、その時それを掻き消したのは、自分が死ねば爆弾の安全が確保できないことだった。それはまずい、とシータは思い、なんとか形勢の逆転を試みるが、それはなかなかうまくいかなかった。もともと筋力がそこまでないシータでは力任せに引きはがすこともできないし、AMF状況下でデバイス無しで魔力攻撃を行えるほど魔力量は持っていなかった。

 眼に浮かぶ光が虹色となり、死を知覚した脳だったが、その瞬間咳き込む自分を確認して同時に男の腕が離れていることを確認する。鬱陶しい感覚に辟易しながら、そのままシータは瞼を開けた。

 虹色の光はでたらめに信号化された視覚神経のもたらした幻覚ではなかった。現に具現化して現われているそれを見てシータは神々しい限りの「何か」を感じた。直観的にだった。ロジックや方程式を超越した何かが、その光にはある。

 オッドアイの双眸に見据えられて、彼女が、それも直観的に、確信ではないけれどヴィヴィオだと分かる。ぶっ倒れた男を邪魔だと言わんばかりにシータは蹴り飛ばし、疲れた体を壁にもたれ掛ける。ヴィヴィオが心配そうに覗きこんでくるのを見て、シータは苦笑した。

「ありがとう、――ヴィヴィオ」

 一瞬の逡巡を経て、シータは名前を口に出してみた。とたんに破顔したその人物に、やっぱりそうなんだな、と思う。それにしても、デバイス無しでこれだけの力を出すとは、と親子そろっての途轍もない魔力値にシータは脱帽する。JS事件の極秘データにも、相当なAMF濃度の中でそれをものともしない大激闘を繰り広げたとあったから、シータはちょっとした畏怖をその少女に覚えた。

「心配したんだよ、シータ兄ちゃん」

 どうもフェイトのコピーらしいその呼びかけに頷きながら、シータは壁から身を離した。

「すまない、遠隔起爆の妨害が最優先と思っていたからね。ヴィヴィオもよくここが分かったね」

「うん、魔力を感じたから」

 あの閃光を放った魔力を僅かに感じ取ってここまで来たというのか。そのスピードと感知能力にシータは疑問を抱いた。そんなことができるのだろうか。

「それでね、ちょっと胸騒ぎがしたから、来てみたの」

 それで助かったことに人生の何かを感慨深げに思い、そのまま客室の方へ向かった。しかし、なんとなく不甲斐ないという思いはシータは抱いた。このヴィヴィオという少女は、聖王と呼ばれる存在とはいえまだ年が二桁にも満たないはずだ。それに比べて自分は何なのだろうか。デバイスに頼らざるを得ない存在。ついこの間まで、正式な労働すらやっていなかった「大人」。護衛官として、人を救える力を持っているのか?

 自問自答が心の奥底で繰り広げられる憂鬱に苛まれながら、シータは護るべき人(フェイト)への通信チャンネルを開く。

「……緊急コード180。護衛官コード2.6.343より通達。」

 超極調短波で発生するこの念話は、護衛官と被護衛者の極秘チャンネル。傍受される確率は限りなく低かった。

 ややあって、フェイトの声が聞こえた。

「……シータ?」

 何か焦っているような声色に思わず怒鳴りつけたくなるような感情を堪え、そっと呟く。

「……フェイト。何か焦っているのか? こちらは大丈夫だよ」

 つい先ほど死にかけた男が何が大丈夫だ、と自分の都合のよさにあきれながらシータは言う。

「だから、一度息を吸え。俺が心配しているようじゃ、他の連中はもっと心配してるはずだ」

「だけど……ユーノやなのはも、それに」

 ヴィヴィオも、という言葉は吐かせないようにその先を覆い隠すようにシータはフェイトを遮って言った。

「とにかく吸え」

 深呼吸する音が聞こえ、シータはこれでよし、と思った。六課や次元の連中が中心の救出部隊と聞いている。地上のようにやすやすと打ち破られる弱兵ではないのだ。そう言う時の懸念は、身内の悲哀を招くことだ。特に精神的にまだ未熟なフェイトはその最大の要因だった。シータはそこまで計算して、まずフェイトの心労を取り除くことを始めた。

「……落ち着いたか?」

「うん、お兄ちゃん」

 自分の呼称が変化し、確かに落ち着いたことを認めたシータは、自分の持っている救出プランを練ることにした。

「作戦責任者はそこにいるのか?」

「うん、今作戦を立ててる」

「現場報告とこちらから作戦の提言をしたい。替わってくれ」

 これで自尊心の強い作戦責任者だったらやりにくいな、とシータは思いながら、頭の中で絵を描いていく。重要なのは、この基地だった。以前の北ベルカ国主席から招かれた時にレクチャーしたのは、確か法に触れるか否かの危険なものだったはず。

「替わった。こちら作戦現場責任者のエドモンド・ドナルドだ。オルフェン三等空尉だな」

「そうです。」

「君の噂はかねがね聞いている。それで、どのように動けばいいだろうか?」

 どうやら戦術師としての実績が世間に広まっているらしい。今はそれに感謝する。

 まずは情報収集。今、敵がどの位置にいるのかが重要だ。

「現在、北ベルカの陸軍はどのくらいの位置です?」

「あと20分でそちらを射程圏内に収めるくらいだ。これから迎撃に向かう」

 割と時間がないな、と思いながら、シータは責任者に告げる。

「おそらくそれは最も近い基地からの直援でしょう。それとの対戦中、おそらく第二の援軍がやってきます。そしてそれは、第一軍への援助をすることはありません」

「それは……どういうことだ?」

 怪訝気な面持ちをモニター越しに眺めるのを見て、シータはデータリンク操作を使ってグラフィック表示で分かりやすく、それこそブリーフィングのように説明する。

「第二軍が援護に入っても、消耗戦が繰り広げられるでしょう。相手もそれを望んではいません。この強行的な行動から、彼らは人質の救出が第一目標だと悟っているはずです。」

「ふむ、それで……?」

 理解しつつある指揮官に安心し、シータは続ける。頭の中の絵を、キャンバスに描くようにグラフィック化していく。具体化していくそれに思考をまとめながら口を開いた。

「彼らは直接第一軍の援護に回るより、人質に襲いかかるでしょう。それも派手に。慌てる救出部隊に対し、挟撃してくることは目に見えています」

「なるほど!」

 感心したといわんばかりの反応に苦笑しながら、シータは続ける。

「それで、起伏の激しい地点――A17地点付近にこちらも伏兵を置きます」

 自動転送されてきた救出部隊の兵力を割くようにグラフィックを移動させる。

「それで、第一軍に対しては互角くらいの戦いを演じてください。無理に迎撃する必要はありません。クロノ提督も人員安全を優先しているでしょう?」

「あ、あぁ」

「なので、押しつ押されつを繰り返すことです。それから、できるだけ相手は殺害しないように」

「何故です?」

「一人負傷させれば、後退させるのにもう一人必要になる。殺してしまえば無力化できるのは一人だけだ。これは効率の問題だ。だが、必要な時は容赦なく殺すことが大切だ。その心構えでないと、今度はこちらがやられるから」

 我ながら酷いことを――命を机上で弄んでいるな、と思いながらも、そういう人材も必要かな、と自分に言い聞かせる。

「それで、人質の救出に関しては、そちらの救出部隊(レスキュー)でなんとかなります。問題は基地の方です」

 今鏡を見たら、きっと暗く深刻な面持ちなのだろう。そう考える余裕があるだけ自分はまだまともかな、と自問し、いやそれはない、と断罪する。

「……あの基地、一度私は北ベルカから科学者として講義で招かれたことがあるんです。議題は、人造魔導士素体への応用が利く物理学的魔力増幅装置に関するものだ。他にもなかなか著名な科学者がいた覚えがある。そしてあの基地、中はなかなかの迷宮だ。だが私なら一度入ったことがある。高町を拉致した理由も。その場所も見当はついている。私が直々に突入します」

「分かった。テスタロッサ執務官をそちらに向かわせるので、デバイスもそちらに送ろう」

 フェイトが来る、そのことに何か嫌な予感がしたが、それでもデバイスの入手とフェイトの増援を客観的に見ても作戦の成功率の増加は明らか。

 コンマ数秒の中で脳が了承を決定する。

「オーケーです。人質の運搬は何で?」

「輸送ヘリだ。護衛付きのな」

「了解。出来れば夏服の人質を外に出したくはないのですが、仕方ないですね。無限書庫のスクライア司書長に防衛は任せています。それに、予想外の助っ人もいますので」

 ニヤリ、とシータは後ろを向く。虹色の光が、未来を象徴しているようだった。





※        ※





 静寂が支配する海を、唸りを立てて砲弾が飛び交う。

「距離6500!」

 じりじりと詰まっていく距離に同調するかのように、ブリッジの空気は張り詰めてゆく。今度こそ、正面からの激突。脱出時間を短くするために、早く殲滅する必要が管理局側にはあった。

「距離4000で副砲発射だ」

 トーンを下げた口調で言うクロノの命令が、各場所に伝達される。先ほど、自艦隊と合流してからのクロノの動きは、焦燥を纏うはずもなく冷徹そのものだった。変に焦って事を仕損じるより、冷静に戦うことこそが行った者たちへの最善のこととなる。ブリッジのカメラがとらえる映像は魔力光を映し出しているが、それ以外の何も映し出さない完全な暗黒からは生の息吹を感じ取れない。隣のモニターで蠢く光の群れは、単に金属の塊を映し出しているにすぎない。

「距離5000!」

 そのカメラに、過ぎ去ってゆく細い魔力光が見える。敵の砲撃だろう。すぐさま観測班に敵艦の正確な位置を割り出させ、モニターのそれと照合させる。

 クロノは敵の砲撃を愚かだな、と思った。最大射程圏なのだろうが、そこに入ったところですぐ発射しても相手にあたることなど皆無に等しい。実際の射程圏と言うのは、撃って当たる位置なのだ。

「距離4500!」

「諸君、戦闘準備に入れ」

 装甲の厚いXV級艦を先頭に配置した単縦陣形で突入する。管理局の艦船は正面に主砲アルカンシェルや副砲を備えつけ、両舷に打撃力のある複数の砲塔がある。主砲・副砲の最大射程は長いため、しっかりと狙いさえつければ相手を牽制することができる。

「距離4000!」

「よし、第一射、()っ!」

 再び相まみえる自艦隊と敵艦隊。先ほどは戦域離脱が主目標だったが、今度は違う。完全なまでの相手の殲滅――それがクロノの目的だった。

 砲撃の魔力光に太い自軍のものが混じり、モニターにいくつもの軌跡が煌く。

「観測データ照合……命中しています!」

 副砲の命中はあまり期待していない。そもそもクリーンな兵器という矛盾を抱えた魔道砲は、物理破壊モードにおいても破壊力はそこまで高くない。アルカンシェルなどは超法規的兵器だが、その発射も提督レベルでないと行えない。

「距離3000!」

 殲滅するためには、そう、そんな矛盾を捨て去らなくてはならない。

 圧倒的な火力。

 アルカンシェルは味方を巻き込むため論外。だが、絶大な火力はそんな巨砲だけで生み出されるものじゃない。

「距離2500……!」

「全艦に通達。打ち方やめ、取舵いっぱい」

 相対距離が縮まっていく中、クロノはクラウディア以下全艦隊の転舵を命じる。

「ディストーションフィールド、右舷に集中展開」

「アイ、サー! DF(ディストーションフィールド)右舷展開!」

 この距離で、反航戦で転舵などはっきり言ってセオリー外。ほくそ笑んでいる敵艦の艦長の顔が浮かんだが、クロノは笑うなら笑え、と思う。最後に笑うのは自分なのだから。

 相対的に相手に対してさらす艦の面積が大きくなり、命中弾も多くなる。だが、弱い魔力砲はディストーションフィールドで遮り、それを通過しても相当厚いXV級艦の装甲がそれをはねのける。

「他艦の被害報告!」

「我が艦隊、被害なしっ! 敵の砲撃は当艦クラウディアに集中しているもよう!」

 副長が命じた報告からは、自艦に集中する相手の砲撃が分かる。読み通りだな、とクロノは思う。そう、艦隊戦の定石(セオリー)は、大きい艦から撃沈すること。だが――定石が最強とは限らないのだ。

「左舷各砲一斉発射準備っ!」

「アイ、サー!」

 火器管制(CEO)に新たな命令を告げる。相手に面した右舷ではなく、左舷での砲塔の準備。右舷で準備をすると流れ弾で爆発する恐れがあるから、というのは素人の考えで、ここからが腕の見せ所なのだ。

「各艦に伝達。作戦(エコー)を発動」

「アイ、サー。相対距離1800です、艦長」

 おそらく、既に自分のとる作戦は分かっているのであろう副長が答える。モニターの光は先ほどよりもどんどん大きくなっている。ミネラルウォーターを口に含み、呟く。

「では、訓練の成果を出すぞ。」

 ふぅ、と息を長く吸い、吐く。空調の利いたブリッジの空気は乾いていて、潤った喉がすぐに通常に戻る。どんな非常警報(アラート)の音声にも負けない大きさで、クロノは叫ぶ。

「面舵いっぱいっ! 敵艦隊の真正面につけろっ!」

「面舵いっぱい、サー!」

 横に引っ張られる感覚は、急激な転舵による慣性だ。鳴りやまない敵の砲撃のモニターに映る魔力光の角度が変わり、一方的に蹂躙されるこちらの装甲のダメージも蓄積されてきている。

「ディストーションフィールドを敵艦隊相対位置に重点展開」

「了解」

「エンジン減速5」

「原則、アイ」

 各所に命令を出し、セオリー外れの戦術の欠点を埋める。XV級はそう簡単に沈まない、だから定石(セオリー)外しが生きてくる。戦闘は教科書だけではない、執務官時代から染みついているその思考をクロノは解き放った。

 相手の単縦陣に対して、こちらは伸びきった横一列。陸戦ならば不利である陣形だが、艦隊戦では一度に火力を集中させることができる。丁字戦法――そう呼ばれる戦術だが、これを実際に行うことは極めて難しい。日頃の訓練と、艦を熟知した戦術眼。全て「人」が重要なファクターなのだ。

「左舷一斉放射準備、他の艦にも伝えろ」

「アイ・サー」

 そして、先頭艦クラウディアは甚大な損害も出さずに耐えきっている。

「一斉放射、()っ!」

 モニターにはっきり映る光の群れ。自軍の一斉射撃だ。丁字戦法はこうして一対多の状況に持ち込んで、各個撃破していくものだ。

「艦長、敵先頭艦撃沈しました」

 そうすれば、打撃力の低い魔力砲でも次元航行船の厚い装甲を破ることはできる。
 敵艦の乗員が転送魔法で逃げたことを祈るが、モニターの横の輝点がひとつ消滅するこのリアリティのない戦場ではそれはただの偽善でしかないとクロノは思う。

 一度丁字になってしまえば、そこからは一方的な蹂躙が始まるだけ。

「よし、即座に次を狙え。」

「はっ。」

 一艦、また一艦と撃沈していく。どれだけの人命が失われたのか分からないが、殺るか殺られるかの戦場はそのことを考えたものが敗者(ルーザー)になる。ただ機械的に、今いる敵を潰していくのが提督の仕事だ、そう考えクロノは攻撃の手を緩めない。

 敵の旧艦であるK級艦やL級艦を撃破していく。L級艦は撃沈よりも中破無力化のほうが多いが、敵にしてみれば同じようなものだろう。

「……あれ!?」

 不意に、ブリッジにあってはならない声がした。その主はヘッドホンを耳につけ、注意深くうかがっている。

「どうしたのだ!?」

 副長が苛立って声の主――測長のもとへ駆け寄る。

「はっ、申し訳ありません。ですが、敵新型艦が陣形後方にいたにもかかわらず消えているんです」

「消えている? どういうことだ」

 クロノも尋常ならざる状況に気づき、測長に尋ねる。確かに、モニターの横のレーダーからあったはずの(・・・・・・)二艦が消えている。

「ちっ……厄介な潜在能力(ポテンシャル)を持っているようだな」

 クロノはそう呟き、モニターを眺める。

「測長、どんなわずかな異常も聞き洩らすな」

 残りL級2艦、K級3艦の時点で、こちらの被害はほとんどなし。まれに見る一方的戦果だが、新型の行方によってはそれがどう様変わりするかは分からない。

 そう簡単にはいかないか……ミネラルウォーターを喉に運び、乾くそれを潤した後、ひとたびそれを頭からかぶりたい衝動にかられた自分に喝をいれながら、クロノは神経の一本一本を研ぎ澄まさせてどんな事態にも耐えられるよう気を張り詰めた。

 魔力光の悪魔の煌きがモニターを通過し、相手の艦に突き刺さる。これで、あと6艦。
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テーマ:魔法少女リリカルなのは - ジャンル:アニメ・コミック

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